2010年6月22日火曜日

量産型ボールマシンを考える

この手の工作は多くの場合、「marble machine」(マーブルマシン)、直訳するとビー玉機械となりますが、これはビー玉ではなくステンレスボールなのでボールマシン=ボール機械とでも呼ぶのでしょうか?
youtubeで公開していると、「I would buy one」 「I'd totally buy this. are you planning on making more that you might sell?」などのコメント文が見られ、欲しがる人が結構いることが分かります。しかし、どれも一品モノなので手放すわけに行かず、ディスプレイ越しに鑑賞してもらうか、また最近ならMakeに出展するので会場で実物を見て頂くことしかできません。仮に人の手に渡ったとしても、その人が機械に対してメンテナンスの技術を持ち合わせていなければ、調子が悪くなったり動かなくなってしまったら、そこでもう終わりになります。
そこで、スペースワープ(ボール転がし玩具)が扱える程度のスキルを持った人向けを想定した小規模のボールマシンを作ってみました。



リフト部

ベースには100x100の朴木(ほおのき)を使います。その上に簡単なリフト機構であるホイールを立てるのですが、今回は板に少し埋め込みます。こうするとホイールへのボール導入口としてベース自体にスロープを作ることが出来ます。






ノミと彫刻刀を駆使します。

ホイールにボールの入る穴をあけます。ボールの直径は7.14mm(9/32インチ)なので8mmのキリを使います。ホイールに対して若干斜めに穴があくようにジグを作りボール盤にセットします。ホイールは丸のまま売られているのですが多くの場合真円ではないので外形を基準に穴位置は決められません。あくまで中心から等距離であけなければいけません。CADで図面を引き、ホイールとなる丸板にそれをプリントアウトしたものを貼り付けます。そして慎重に穴をあけていきます。深さはボールがすっぽり隠れるくらいです。穴数は適当です。今回は10個にしました。


穴あけジグ


図面を貼って印を打つ


穴あけ断面図









ホイール駆動部

ホイールを回転させるには、小さなタイヤを回してホイールの外周に接触させ伝達するという非常にスマートな方法です。ギヤモータはいつもの通りgizmoszoneで購入しました。香港の模型パーツ通販サイトのようです。国内でも超小型ギヤモータを製造しているところはありますが、高精度ゆえ非常に高価なのでボールマシンのような工作には気軽に使えません。


香港より到着


GH810136V3L

今まで十数個買ってましたが、回転音の静かな7000rpmがギヤヘッドで50rpmになるタイプのGH810136V3Lが良いでしょう。やはり、ボールの転がる音も楽しむ工作ですからモーター音は無いのが理想です。しかも今回は1.5v駆動ですから本当に静かです。ですがこのギヤモータは出力軸に多少のブレがあるという欠点があります。指で触るとよく分かりますが、「グラグラ」感があります。軸に対して横方向から荷重のかかる今回のような使い方には別途ベアリングを用意し軸の先端をそれで受けるように工夫します。モーターユニットが出来たらホイールの外周にタイヤが適度な圧力で触れるようにスプリングを設け、ユニットが揺動するようにします。


小タイヤにはタミヤのミニ四駆用17mmアルミベアリングローラーを流用
ローラーのベアリングを外して木片に埋め込む
ローラーにはタミヤプーリーセットのブッシングをはめ込む


スプリングの取り付け


0:09より揺動部のアップ





完成


ここまで解説しているうちに量産は到底ムリと悟る。

この後、下り部も長いので次回また・・・

2010年6月11日金曜日

Pepper-monakaで遊ぶ

MIDIをベースとしたフィジカルコンピューティング用のプラットフォームを開発していらっしゃるもあさんより、パソコンからMIDIクロックを取り出すことが出来るプログラムが書き込まれたPepper-monakaのモニターをさせて頂いています。つい最近までtwitter上で機能追加や要望、実際にPCにつないだ上でのテストなどを繰り返し、ようやくfixしようとしています。

※今回試用したmonakaはテスト版であり正式リリース品ではありません。

さて、monakaとは「morecat.lab」をご覧頂くと分かると思いますが、コンピュータと物理的(physical)な物体をUSB-MIDIでつなぐインターフェイス装置です。今回はmonakaの中でも一番小さな規模であるPepperを使ってMIDI同期式アナログシーケンサを作りました。超小型のPepperはこのような自作機器に組み込みやすく出来ています。今回のMIDIクロックを取り出すPepperのプログラムはもあさん製ですが、プログラム次第で様々な使い方が出来るようです。彼の著書もあるので、これを機にフィジカルコンピューティングの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

Gainer互換Pepperでフィジカル・コンピューティング 桑田 喜隆 著 CQ出版

今回モニターをさせて頂いたきっかけは、ドラムシンセ XR-NoizBoxIIを試作したときに、Ginger-monaka(中規模monaka)があればパソコンからトリガーパルスが取り出せるという話を伺い、「じゃぁ付けてみるー」と軽い気持ちでGingerを分けて頂いたことが始まりでした。しばらくして、もあさんに「MIDIクロックが取り出せたらLFOと同期できたりするよねー」と話が発展し、トリガーとMIDIクロックだけならPepperで十分ということで今に至ったわけです。



ぼくの場合、いつも入れ物ありきなのでちょうど良さげなケース探しから始まります。一番のおきにーが無印良品のPP(ポリプロピレン)ケースです。Pepperの活用例という意味合いもあって最低限4ステップの電圧設定用ボリュームが4個並べられるPPピル・ピアスケースを利用しました。

部品ストックの中からユニバーサル基板を取り出し、部品を適当に配置して配線。製作過程の様子はエラく端折りましたが、ろくに回路図を書かずに作業したので思ったより手こずりました。以前、16ステップのアナログシーケンサを作ったときにちょっと要領を得たこともあり、今回はオートリセット回路を付けました。Pepperからパルスが来なくなったらカウンタにリセットを掛けちゃおうというものです。リセットの仕組みは、連続したパルスがひとかたまりのHロジックレベルになるよう、エンベロープフォロワを通します。ネットを漁っているといくらでも出てきますがC-MOSインバータのみで作られていた方が何かと都合が良いのでこれを参考にしました。それで得たリセットパルスをバイナリーカウンタの4024のリセット端子に放り込みます。

都合が良いというのはその回路の出力段に微分回路を設けたので、その波形を整形するためのゲートが必要だったり、GATE出力の極性を両方用意するのにも使います。リセットまでの時間はC1によって決まりますが、ちょっと長めですので適宜変更しても構いません。
電圧切り替え(シーケンス)には4ステップなのでC-MOS 4000シリーズの4052を使いました。4つ切り替えのスイッチが2組内蔵(但し制御は1系統)されていますので、ボリューム用とLED用でピッタリです。
今回の用途のPepperはパソコンから送られてきたMIDIクロックを分周する働きをしますが、分周比の設定をコントロールチェンジにて行います。MIDI規格では4分音符あたり24のパルスを送ることになっていますので4分音符のパルスを得たい場合はMIDIクロックを24で割ります。16分音符でしたら6という具合です。さて、4つ並んだボリュームですが、4024にリセットが掛かった場合4番目のボリュームに止まるようにします。スタートでパルスを数え始めるので4番目の次の1番目からシーケンスが進みます。
ケースの厚みがギリギリなのでCVとGATEの端子には面実装タイプの3.5mmミニジャックを使いました。1.0mmの片面生基板を切り出し、Pカッターでスジ彫りパターンを作りました。あとはケースに穴加工を施して完成です。

ステップ表示のLEDは敢えてパネルに出しません。半透明なケースの中でぼんやり光る様子が美しいのです。

電源はUSBバスパワーなので電池が不要です。


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